ネフロン癆(ろう)は、腎臓に嚢胞(球状の袋)ができる進行性の嚢胞性腎疾患です。
ネフロン癆は腎臓の尿細管細胞に存在する一次繊毛の構造的、機能的異常が原因とされ、その結果として腎臓の構造や機能障害を引き起こします。
ネフロン癆は3つのタイプに分かれており、3~5歳頃に末期腎不全(透析や腎移植が必要になる状態)になる乳児ネフロン癆と、幼少期から学童期に発症し、平均13歳頃に末期腎不全になる若年性ネフロン癆、そして平均19歳頃に末期腎不全に至る思春期ネフロン癆があります。若年性ネフロン癆が最も多いといわれています。
ネフロン癆では、水分や栄養分の再吸収に働く尿細管に障害があるため、尿量が多くなり、塩分や水分も多く失われます。そのため、初期症状としては、多飲、多尿、、昼間の尿失禁や夜尿、成長障害(体重増加不良・低身長)などがあり、若年性ネフロン癆では4~6歳頃から現れます。尿検査の異常で発見されることは少なく、低比重尿(濃度の低い尿)が見られます。腎機能障害が進行すると、尿量が減るとともに、高血圧や貧血がおこります。また、ネフロン癆の患者さんの10~20%には腎外症状(眼症状や精神発達遅滞、骨格や顔貌異常など)が起こり、腎外症状から発見される例もあります。特に、網膜色素変性症(最も合併が多い眼の病気)、眼球運動の失調、肝線維症、骨格や顔貌の異常なども早期発見のきっかけにもなります。
診断が難しい場合が多く、遺伝子検査は診断の助けになりますが、遺伝子異常が認められるのは患者さんの約30%です。上記の症状や超音波検査、腎生検(腎組織の一部を採取する検査)の結果などから総合的に判断します。
現時点では、根本的な治療法はありません。末期腎不全に至る時期をいかに遅らせるかに主眼を置いて、薬物療法や食事療法が行われます。その他、高血圧や貧血などの合併症に対しても薬物療法や食事療法が行われます。また、腎不全による低身長では、成長ホルモンによる治療を行うこともあります。
適切な血圧にすることで、低形成・異形成腎においても腎臓の働きが悪くなるのを抑える可能性があります。
血圧が高い場合には年齢・体格に合わせた血圧になるように、お薬で血圧を下げる治療を行います。
血圧を下げるお薬にはレニンアンジオテンシン系阻害薬、カルシウム受容体拮抗薬などがあります。
・腎不全による貧血に対して、鉄剤の内服や赤血球をつくるためのホルモンを定期的に投与します。
・腎不全により、カルシウムやリンの調整の働きをするビタミンDの活性ができなくなるため、飲み薬で補います。
・腎不全により、血液の酸性化を防ぐお薬を飲みます。
・高血圧に対して血圧を下げるお薬を飲みます。
・基準となる身長を下回る低身長(標準身長の-2.5SD以下)は、成長ホルモンを注射で投与します。
・その他、尿酸を下げるお薬や、腎機能が悪くなると増えてくる尿毒症症状(食欲不振、痒み、吐き気)を引き起こす毒素を減らすためのお薬を飲むこともあります。
・年齢に必要なエネルギーや蛋白はしっかりとってもらいます。
・腎機能の状態によってカリウムやリンの制限を行うことがあります。
・尿量が多い間はたくさんの水分や塩分を失い脱水になってしまうため、その間は水分や塩分はしっかり摂取してもらいます。腎の働きが悪くなって尿量が減ってくるようであれば塩分の制限を行います。
平成29年時点で130 人以上いることが報告されています。
NPHPという遺伝子の異常が原因であることがわかっていますが、この遺伝子に異常が見つからない患者さんも報告されています。
常染色体劣性遺伝形式をとりますが、孤発(病気が散発的に起こり、家族には遺伝しない)例も報告されています。
腎機能の状態によって運動できる範囲が変わります。
腎機能を保つためにも、運動の際は脱水にならないように飲水や塩分をしっかりとってもらいます。
すべての方が成人までに腎不全に至ります。
末期腎不全に移行した場合は、腎臓の働きを補う腎代替療法を行います。
腎代替療法には透析療法(腹膜透析・血液透析)と腎移植(生体腎移植、献腎移植)があります。腎代替療法の選択に関しては生活環境やライフプランに合わせて、主治医と本人や家族と相談して決めます。