⼩児腎領域の難病とは

 「難病」は,医学的に明確に定義された病気の名称ではありません.いわゆる「不治の病」に対して社会通念として用いられてきた言葉です.そのため,難病であるか否かは,その時代の医療水準や社会事情によって変化します.例えば,かつて日本人の生活が貧しかった時代には,赤痢,コレラ,結核などの伝染病は「不治の病」でした.その当時は有効な治療法もなく,多くの人命が奪われたという点で,これらの疾病はまぎれもなく難病でした.しかし,その後日本人の生活が豊かになり,公衆衛生の向上,医学の進歩および保健・医療の充実と共に,これらの伝染病は,治療法が確立され不治の病ではなくなりました.しかし,治療がむずかしく,慢性の経過をたどる疾病もいまだ存在し,このような疾病を難病と呼んでいます.また,昭和 47 年の厚生省(当時)の「難病対策要綱」には,「(1)原因不明,治療方針未確定であり,かつ,後遺症を残す恐れが少なくない疾病,(2)経過が慢性にわたり,単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く,また精神的にも負担の大きい疾病」と定義されています.

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