小児の慢性腎臓病とは

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 慢性腎臓病(CKD)とは,2000年代に入り確立した新しい病気の概念で,原因にかかわらず,検尿の異常(とくに蛋白尿)や腎臓の機能の低下,あるいは超音波などの検査でわかる腎臓の形の異常がある状態のことを指します.将来透析,腎移植が必要な末期腎不全に進行する危険性が非常に高く,また心臓や血管,骨など全身の臓器に悪影響を及ぼすことも分かっています.世界的に膨大な数の患者さんが罹患していて,大きな問題になっています.
 小児の慢性腎臓病は成人と少し状況が異なります.まずあまり研究が進んでおらず,分かっていない事が多いのです.また原因は成人では糖尿病や慢性腎炎,高血圧などが多いのですが,小児では先天性腎尿路異常という,生まれつき腎臓や尿路(尿の通り道)の異常があり,そのために徐々に腎臓の機能が失われていく病態がとても多いのです.(私たちは小児慢性腎臓病(小児CKD)と言って,成人と異なる病態であることを強調しています.)
 それでも徐々に研究が進み,成人と同じように末期腎不全へ進行する危険性が高いことや様々な合併症を持つことが分かってきました.成長障害(低身長)のように,小児特有の大きな問題もあります.ですから早い段階で正しく診断し,また小児CKDにもっとも有効な治療を行って,一人でも末期腎不全になる小児を減らすことが重要です.私たちはこのような目的で小児CKDの研究を始め,日本における小児CKDの頻度や原因について,明らかにしてきました.今後も研究を続け,早期診断から末期腎不全を防ぐ治療までを確立し,小児CKDの医療をより良くしていきたいと考えています.

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